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笹幸恵
2022.8.31 07:28皇統問題

男系固執派の主張、丸々コピペ! 施光恒氏の産経記事

昨日の産経新聞、施光恒氏の記事を読んだ。
「愛子天皇」待望論の危うさ
https://www.sankei.com/article/20220829-PRW2SF53QNN7PPOVO5OTL7RPZM/

驚くべきことに、ウンコ味噌汁竹田(下品だが実態を知ってもらうために
何度でも記す。竹田は「女性天皇はウンコが入った味噌汁だ」と言った)
の主張と全く一緒、単なるコピペ!


「私は、愛子天皇待望論には反対だ。
皇統はわが国の伝統に従い、
男系継承を続けていくことが大原則である」

「皇統の系図をみれば、男系でつないできたのは明らかである」

「女性天皇は歴史上8方10代(お二人は2度天皇になられた)存在し、
大きな業績を伝える方もおられるが、
いずれもしかるべき男系男子への中継ぎ役だった。
女性天皇は、どの方も少なくとも即位後は結婚していないし、
懐妊もしていない。
このことも、男系でつなぐという
過去の日本人の意思の表れだと解釈できる」

驚くべき単細胞ぶり。
「伝統に従い」というが、その伝統とは何か、
少しでも考えてみたことがあるか?
「系図を見れば男系継承は明らか」というけど、
シナの律令が入ってくる前、すなわち古代の日本では
即位したのは男女の割合半々。これはなぜか?
これら女帝を「単なる中継ぎ」とするのは、
あまりに乱暴な解釈ではないか?

日本には同姓不婚のルールや社会通念がない(今も)。
父系社会(男系継承)ではなかった証しである。
ではどんな社会だったか。
父方・母方の区別のない、双系社会だった。
国としてまだ未熟だった古代の日本では、
群臣たちを束ねることのできる熟年の指導者が選ばれた。
男であろうが、女であろうが、だ。
女性蔑視の感覚はない。だから女帝が誕生した。
その時代的背景や価値基準をまるっきり無視して
「しかるべき男系男子への中継ぎ役だった」などと
決めつけるのは、学者として全くあるべき態度ではない。
歴史に対する冒涜ですらある。

そもそも「古代の女帝が中継ぎ」なら、それ以降、
皇位の継承が危ういとき、
「とりあえず女帝を立てとこう」と緊急避難的措置が
取られても良かったのではないか?
ほとんどそれがないのはなぜか、考えてみたことあるか?
「結婚も懐妊もしていないから、中継ぎ」など、噴飯ものである。
6〜7世紀、推古天皇から元明天皇まで、全員既婚者、未亡人。
即位したのは30代後半〜60代。
もうこれだけで「結婚や懐妊のないこと」が
「中継ぎ」の根拠にならないことは明白だ。

さらに男系で継承されてきた理由として、施氏は
「その時々の権力者に皇室が政治利用されることを防ぐ」
ことがあったと指摘している。
そして、これは井上毅も言ったという。
冗談じゃないよ。
井上毅は明治時代の男尊女卑的感覚で
モノを言っているに過ぎない。
曽我、藤原、源などと時々の権力者の名を挙げているが、
今は令和の時代だよ?
現代の日本で権力者といえば総理大臣になるだろうが、
岸田総理の息子が愛子さまと結婚されたら
「岸田朝」になるとでもいうのか?
ちょっと考えればすぐにわかる。
多くの人は、愛子さまが岸田家に嫁いだとは思わない。
皇族である愛子さまのもとに、岸田息子が婿入りしたのだ。
当主は愛子さまである。岸田息子は皇族となって名字がなくなる。
それだけのことだ。
美智子さまが皇室に入られて「血統」が変わったか?
雅子さまが皇室に入られて「易姓」が起きたか?
もう一度言う。
ちょっと考えればすぐにわかる(男系カルトでなければ)。


「愛子さまのご即位を進める流れが実際に生じれば、
国民の間に大きな分断をたびたび生じさせることになるであろう」

ならない。国民の8割は女性天皇を支持している。
大きな分断が起きるというが、それは男系固執派が
男尊女卑&男系血統原理主義を大声で騒いでいるからだ。
彼らの主張は、詰まるところ、
「女性・女系天皇はウンコが入った味噌汁」だという
下劣な発想によって成り立っている。
そんなものに加担して恥ずかしくないのか。


「こうした混乱を招かぬためには、
まず国民ひとり1人が皇室についてよく学ぶ必要がある。
倫理学者・和辻哲郎がかつて指摘したように、
日本の歴史では「国民の統一、国民の総意は、
いつも天皇において表現された」(『国民統合の象徴』)。
「国民の総意」とは、ある一つの時代を生きる
日本国民だけの意思ではない。
過去に存在した歴代の日本人の意思も含まれる。
われわれは皇室の伝統を学び、
先人の思いを汲み取らなければならない」

このくだりは、全く同感。
過去に存在した歴代の日本人の意思を汲み取れと
いうのなら、施氏は、皇統の系図だけを見て
判断すべきではない。
その時代に何があったか、どんな価値観を持っていたのか、
その上で何を重視していたのか、よく学ぶ必要がある。
ゆめゆめ近現代の価値観のみに裏打ちされた
結果論に陥るなかれ。
学者なら、歴史を語るなら、当然の姿勢だ。

そして「伝統」を言うのなら、その本質をよくよく考えろ。
不易流行。
過去が男系継承だったから、現代も未来も男系継承?
それは伝統ではなく、ただの前例主義だ。
守るべきは「国民統合の象徴」たる天皇ではないのか。

そしてまた、繰り返しになるが、かつての日本に父系原理はない。
にもかかわらず、シナの男尊女卑思想を丸呑みして
これが日本の伝統などと、無知と勘違いも甚だしい。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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